アグリコース / 酒井 翔平

内定先:長野県職員(農業)

卒業年:2022年3月
出身県:長野県
出身高校:長野県立塩尻志学館高等学校

Q1. 就職先、進学先として内定先を選んだ理由・きっかけについて教えてください。

ANSWER 家業である農業を幼いころから手伝っているうちに、現在の農業が抱える課題を知ることになったというのがすべての始まりです。それからは、課題の解決法を大学で考えるようになり、最終的にこういった課題の解決はその糸口が1つでない、という結論に至りました。技術開発・品種開発・営農指導から政策立案に至るまで、あらゆるアプローチが必要だと考えた私は、公務員という道を本格的に目指すようになりました。

公務員になりたいと思ったのはいつ頃からですか。

一番最初に意識し始めたのは高校に入学することだったと思います。実家を手伝っていて、農業があらゆる面で「きつい」と感じました。それに対して何かできないかというのは子供の頃から考えていたのですが、実際に何をやるのかは思いつきませんでした。高校に入学時に、この先の将来どうするかを考え始めたのがきっかけで目指すようになりました。

どういった点で農業はきついと感じましたか。

一番は担い手がいないこと、根本的な問題ですね。当時は祖父が現役だったのですが、今は完全に引退していて、その後を継いだ父ももう60歳近くになります。自分の家だけでなく、周りの家でも「〇〇が引退した」「〇〇の場所が使われなくなった」という話はいつものように聞いていました。やる人がいないこと、そのことが一番大きいと思います。

「自分で農業をやろう」とは思わなかったのですか。

中学生くらいまでは思っていました。自分で継ぐのは確かに大切ですが、でもそれでは問題の根本的な解決にならないと思い始めました。ちょうどその頃に兄が後継ぎとして、家の手伝いをしてくれるようになったので、じゃあ自分は別の方向からそれを支えていかなくてはいけないんじゃないかと思うようになり、支える側にシフトするようになりました。

公務員になるにあたってやってみたいことはありますか。

希望としては、試験場に配属されて技術開発をやっていきたいという想いがあります。ただそれはあくまでも第一希望で、どこに配属されてもたくさんの農家の方々と関わっていくと思うので、より広く、より多くの地域で実際の農家さんの声を聞いてその実態を知ることを意識していきたいと考えています。

今後挑戦していきたいことはありますか。

実現可能かどうかは別として、地元の試験場で研究しているものの一つに、レタスの収穫機というものがあります。その実用化に関われたらと思っています。収穫を実際に手伝ってきてどれだけ大変かがわかるので、初めて耳にしたときは「そんなこと可能なのか!」という驚きがありました。実現できたらどれだけ省力化になるか、革命的な技術だと思うので自分も関わりたいと素直に思います。

酒井さんの感じている、担い手不足の課題解決にもつながると思います。根本的な担い手の人員不足の解決としてやりたいことはありますか。

現金な話、人が足りない一番の理由は収入だと思います。レタスも昔ほど収入につながりません。収入をいかにして安定させるか、政策によってサポートしていきたいというのが最終的な目標です。

就職活動では何が一番大変でしたか。

面接が一番怖かったです。筆記試験は問題が解ければ点になるので対策がしやすかったのですが、面接は何が点数になるのかがわかりませんでした。直前まで準備をしてこなかったので、いざ面接となるとうまく答えられず、何をすればいいのかわからなくなり慌ててキャリアセンターに駆け込みました。

面接本番に向けて何度も何度も練習をしてきましたが、繰り返すうちに手ごたえのようなものは感じられるようになりましたか。

最初は台本を読んでいるかのように話していたのですが、次第に自分の常日頃から思っている考えが自然に出てくるようになりました。どんな質問が来ても答えられる、という自信につながりました。

Q2.大学で学んだことを今後、どのように活かしていきたいですか。

ANSWER 基礎的な農業知識はもちろん、課外活動によって得られた経験も活かしていきたいと考えています。例えば、坂井地区での研究活動です。この活動は研究でありながら、その根底には常に中山間地の持続的な農業を考えるというコンセプトがありました。自分たちの活動が本当に役立つのか、どう役立つのかを考えることで、農家の方々を支えるには何を成すべきかを勉強することができたのです。

坂井地区ではどのような研究をしていましたか。

中山間地の田んぼをお借りして、ケイ酸資材の効果や追肥の有無がどれだけ経済活動に影響をもたらすのか、どれくらい労力を減らせるのかを考えることが研究の内容でした。自分たちで研究設計から実際の作業までやって最終的に経済評価までを出すというものです。地域の方々と交流しながら行い、フィードバックまで出すというのが全体的な流れでした。

研究の中で感じたことはなんですか。

こういう活動で大事なのは働きかける側もそうですが、実際の現地の農家の方々の意思が色濃く出るなと感じています。いかに現地の方のモチベーションを爆発させるかが重要だと思います。最低限の知識がないとコミュニケーションは成立しない場合もありますし、最低限の知識があってなおかつ、相手を思う気持ちがあって初めて成り立つのだと感じました。

この経験が今後の仕事で活かせそうなことはありますか。

例えば試験場で研究するとしても、それがどういった面で実際の現場にどう影響するのかを常に考えられるようになりました。また、研究者側と生産者側だと、研究者側はデータに基づいて研究を行いますが、生産者側は長年の経験に基づいて生産します。どうすれば意識の共有ができるのか、直感的にわかりやすい資料を用いながら説明するということも学べたのも今後に役立つと思います。

Q3.『これから食の分野を目指す高校生』にメッセージをお願いいたします。

ANSWER 本学で学ぶという事は、食という我々とは切り離せないものを支える人物を目指す事を意味します。その事を意識して誇りを持ち、自分の成せること、やりたいことをぜひとも本学で探してください。そして、自分の芯を確立して様々な業界で活躍する人材になってください。

改めて、酒井さんにとって「自分の芯」とは何ですか。

今後の将来において、いかに地元を想い、地元を知って、地元のために貢献できるかを常に考えようということです。その土台があるからこそ、先ほどの話のように聞かれたことに対して自然と答えが出てきたことにもつながっているのだと思います。後輩たちには、今後何をやりたいかを最終的には見つけてほしいです。